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過去の名試合映像や卓球雑誌で時折目にする「王子サーブ」。
深くしゃがみ込んで放たれる不思議なサーブは、かつて世界のトッププレーヤーたちを震撼させ、「魔球」としてその名を轟かせていました。
しかし現在では、王子サーブを目にする機会は、ほとんどありません。そのため、
- もしかして、禁止されたの?
- 今の高速卓球では通用しない古い技術なの?
と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
本記事では、王子サーブの由来や仕組みを整理した上で、なぜ現在あまりみられなくなったのか、そして今でも戦術的な価値があるのかを解説します。
目次
王子サーブとはなにか
王子サーブとは、卓球において用いられる正式な技術名でもなければ、ルール上で定められた用語でもありません。
特定のサービスフォームや回転の特徴を指しており、指導者やファンの間で使用されるようになった通称名です。
王子サーブの名前の由来
王子サーブの「王子」は、「Prince(王子)」を意味する言葉だと思っている人は多いのではないでしょうか。
実は、王子サーブの「王子」は、このサーブの考案者である作馬六郎氏が運営していた「王子卓球センター」という屋号に由来しています。
同センターは大阪市阿倍野区王子町にあったことを踏まえると、王子サーブは選手名ではなく発祥地の名前が技名として定着した、極めて珍しい命名ケースのサーブと言えるでしょう。
しゃがみ込みサービスの一種としての特徴
多くのしゃがみ込みサービスはラケットの「フォア面」で打ちますが、王子サーブはラケットの「バック面」を使用し、縦に振り下ろすように打つのが最大の特徴です。
バック面でボールの側面を捉えるため、通常のフォア面を使用するサーブとは全く逆の回転軸が生まれます。見た目から回転を判断しづらく、レシーブ側が翻弄されやすい「魔球」サーブとして知られています。
王子サーブは禁止技なの?
結論から先にいうと、王子サーブは禁止技ではありません。
王子サーブを使用する選手を以前ほど見かけなくなったことから、「禁止されたのではないか?」という誤解が生まれたのだと思います。
今でも松平健太選手や菅澤柚花里選手といった一部のトップ選手が、要所で王子サーブを出していることからも、ルール上認められた禁止サーブではないことがわかります。
ただし、しゃがみ込んだ姿勢によってボールが見えにくくなったり、体や腕で意図せず隠してしまったりすることで、フォルトを取られるリスクがある点には注意が必要です。
王子サーブの「魔球」と呼ばれる理由
王子サーブがかつて世界を震撼させ、「魔球」として語り継がれたのには、大きく分けて3つの理由があります。
1つ目は、ハイトスから繰り出される圧倒的な回転量。
高く投げ上げられたボールの落下速度を、しゃがみ込みながらラケットを叩き切るスイングで回転エネルギーに変換しています。
重力と全身のバネを利用した打球は、通常のサーブでは及ばない強烈なキレを生み出しています。
2つ目は、ラケットのバック面でボールの側面を捉える点。
ほとんどのサーブはラケットのフォア面を使用するため、レシーバーは無意識のうちにフォア面で擦るスイングに対して脳が反応するように練習しています。
しかし王子サーブはバック面を用いるため、同じスイング方向でも回転方向が通常のサーブとは全く逆になるため、レシーバーの判断が一瞬遅れるのです。
3つ目は、激しい上下動による目線の撹乱。
サーバーが急激にしゃがみ込むことで、レシーバーの視線から一瞬サーバーが消えたり、目線がつられて上下に動いたりします。
この一瞬の視線的撹乱がインパクトの瞬間を見逃させ、レシーブミスを誘います。
これらの
- 回転の重さ
- 逆の回転方向
- 視覚的な罠
という3つの要素が組み合わさることで、レシーバの判断を狂わせます。これこそが王子サーブは「魔球」と呼ばれるゆえんです。
王子サーブのやり方
王子サーブは一見すると簡単そうに見えますが、やってみると非常に繊細で高度な技術であることがわかります。
- グリップの握り方:通常、ラケットは親指と人差指で挟み込みますが、王子サーブを出す時は人差し指を親指側に回し、人差し指と中指で挟み込むように持ち替えます。
- インパクト時の体勢:膝を深く曲げ、ラケットのバック面を相手に向けます。
- スイング:落下してくるボールの左側を上から下へ振り下ろします。
サーブを出す時の指の移動はもちろんのこと、落下してくるボールをバック面で薄く捉える点が、王子サーブの最も難しく、かつ重要なポイントです。
王子サーブの返し方
王子サーブは非常に難易度の高いサーブであるため、試合で遭遇する機会はほとんどありません。
だからこそ、対戦相手が王子サーブを打ってきた場合、パニックにならないことが最も大切になります。
一般的に、右利き選手がフォア側で捉える通常のしゃがみ込みサーブは、レシーバー側から見て右に曲がる傾向があります。しかしバック面で捉える王子サーブは左に曲がる性質があります。
- ラケット角度の調整:面を相手のバック側に向け、回転の力を逃がすように意識します。
- 回転を上書きする:回転が読みきれない場合、チキータやフリックなどを用いて、自分の回転を上書きしましょう。
回転方向と回転量さえ読み間違えなければ、あとは通常のレシーブと変わりません。落ち着いて対応しましょう。
王子サーブを使う選手
王子サーブは誰でも簡単に扱える技術ではないため、実際に使用している選手はごく限られています。
福原愛
福原愛選手がオリンピックで使ったことから、一般の人にも「王子サーブ」の名が広まりました。
オリンピック時、「なぜ王子サーブを出さないんだ」という声がありましたが、徹底的な対策を講じられたことで、キャリア後半では使用頻度が減少していました。
福岡春菜
北京オリンピックの日本代表の福岡春菜選手は、王子サーブの代名詞的存在。
最も王子サーブを極めたマスターとして知られています。
同じしゃがみ込みのフォームから、バック面だけでなくフォア面も使い分けます。横回転だけでなく、下回転や上回転、ナックルなどの変化を自在に操り、世界ランク上位の選手たちがそのサーブに翻弄されました。
数十種類の回転を操るその姿は、まさにサーブの魔術師でした。
松平志穂
兄の松平健太選手とともに松平志穂選手も王子サーブの使い手として知られています。
王子サーブを出すことはめったにありませんが、松平兄妹が要所で王子サーブを使用していることは、高速ラリーが主流の現代卓球においても、通用することを示しています。
王子サーブはなぜ現代卓球では使われなくなったのか?
使い方によっては大きな武器になる王子サーブですが、現代卓球では使用される頻度が大きく減少しました。
それには、卓球を取り巻く環境の変化と、技術の進化があります。
チキータによる横回転刈り
かつては強力な武器だった強烈な横回転サーブも、チキータの普及によって格好の標的となりました。
回転を抑えて返すのではなく、回転を利用して攻めるチキータにとって、王子サーブの大きな横回転と相性がよく、狙い撃ちされやすいサーブになってしまいました。
身体の成長とともに直面するデメリット
バック面を使う王子サーブを打つためには、フォア面で打つ通常のしゃがみ込みサーブよりもさらに深くしゃがみ込まなければなりません。
身体が小さい小学生選手であれば、低い位置で上から叩き切るしゃがみ込みサーブは出しやすい技術です。
しかし身体の成長とともに必要なしゃがみ込みの深さは増し、膝や腰への負担も増していきます。
その結果、ケガのリスクも考慮し、成長とともに敬遠されるようになります。
プラボールへの変更による回転量の減少
セルロイド製のボールがプラスチックボールへと変更されたことで、以前より回転が落ちやすく、相手からの強打を受けやすくなりました。
この用具の変更は王子サーブのような回転量で勝負する技は逆風となり、リスクに見合うリターンを得にくくなりました。
リスクが高い技術としての位置づけ
王子サーブは、成功すれば大きな結果を得られます。しかしその一方で、打球後の姿勢が崩れやすいため、3球目攻撃の体勢を整えるのが遅れるという致命的な弱点があります。
深くしゃがみ込み、再び立ち上がる動作の中で目線が大きく上下するため、返ってきたレシーブを正確に見極めるのが難しいのです。
ラリーのスピードが上がった現代卓球では、このわずかな遅れが命取りとなるのです。
王子サーブを活用する2つのメリット
現代卓球において、王子サーブは主流の技術ではありませんが、完全に価値を失ったわけではありません。
むしろ使い手がいなくなった現代だからこそ、意表を突くという点で、今でも強力な武器になります。
王子サーブのメリット1.
意表を突ける
王子サーブの最大の強みは、相手の想定外を突ける点です。
バック面を使った特殊な回転のしゃがみ込みサーブを想定した準備をしている選手は多くないため、試合の流れの中で一度だけ出す王子サーブは、相手の判断を一瞬遅らせる効果があります。
常用技ではないからこそ、相手の判断を一瞬遅らせ、レシーブミスや甘い返球を誘発できます。この初見状況を意図的に作り出せる点に、王子サーブの戦術的価値があります。
王子サーブのメリット2.
「あえて使う」ことで流れを変える可能性
王子サーブは、得点を量産するためのサーブではありません。しかし試合の流れを変える起爆剤としての効果を期待できます。
連続失点を止めたい場面や、相手のリズムを崩したい場面など、あえて大きな上下動を伴う王子サーブを1本見せることで、相手の視線を惑わせます。
また、一度でも見せれば、相手の頭の中には「また来るかもしれない」という意識が残り、通常のサーブに対する踏み込みを甘くさせる効果を期待できます。
トップレベルの選手が「ここぞ」という場面で使うのも、その心理的効果を最大限に引き出すためです。
王子サーブのリスクを承知の上で、狙いを持って使えば、今でも十分に戦局を変える可能性を秘めています。
まとめ:王子サーブは実戦向きか
王子サーブは、かつて「魔球」として世界を驚かせ、多くの卓球ファンを魅了した素晴らしいサーブ技術です。
しかし現代卓球において常用されるべき実戦向きの技術であるかといえば、答えは「ノー」です。
その理由は、これまで述べてきたとおりです。
- 環境の変化:チキータの普及とプラスチックボールへの移行
- フィジカル面でのリスク:膝への負担と、ラリーの高速化による戻りの遅れ
王子サーブは、コンマ数秒のピッチを争う現代卓球との相性はよくないのです。
だからといって、完全に価値を失ったわけではありません。
Tリーグを見れば、松平健太選手や菅澤柚花里選手など使い手は限られるものの、ここぞという場面で使用していることからもわかります。
王子サーブの習得を目指すよりも、まずは基本的なサーブやレシーブ、ラリー力を磨くことが最優先です。
そのうえで隠し玉として王子サーブを引き出しに持っておくこと。それこそが現代卓球における王子サーブとの正しい向き合い方と言えるでしょう。
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