シェークハンド全盛の時代において、日本式ペンホルダー(日ペン)はもう時代遅れなのだろうか?
一昔前は、卓球といえば日ペンが主流でした。
しかし現在、周囲を見渡せばシェークハンドの選手ばかり。
「日ペンを捨てて、シェークに切り替えたほうがいいのだろうか」と、実際に悩む人も少なくありません。
しかし結論から言えば、日ペンは現代卓球でも十分通用します。むしろ少数派になったからこそ、シェークにはない戦術で相手を翻弄できる場面もあります。
この記事では、日ペンのメリット・デメリットだけでなく、現代卓球でも通用する理由など、日ペンならではの魅力を解説します。
目次
卓球の日ペン(日本式ペンホルダー)とは?
ペンホルダーとは、ペンを持つように握るラケットのことであり、「日ペン」とは、片面打ちを基本とする日本伝統の形状をしたペンホルダーラケットのことを指します。
日ペンと中ペン(中国式ペン)との違い
ペンホルダーラケットは、大きく分けて「日本式ペンホルダー(日ペン)」と「中国式ペンホルダー(中ペン)」の2種類があります。
どちらもペンホルダーという点は共通していますが、以下のような違いがあります。
| 日ペン | 中ペン | |
| グリップ | コルクが貼られ、固定しやすい | シェークハンドの柄を短くしたような平らなグリップ |
| ブレード形状 | 角型・角丸型・丸型 | 丸型のみ |
| 板厚 | 片面ラバーを前提に厚い | 両面ラバーを前提に薄い |
| 主流の戦い方 | フォア主体 | 裏面打法を併用 |
同じペンホルダーでも、日ペンはコルクで握りを安定させ、片面打ちの威力と手首の自由度を最大限に引き出す設計。
中ペンが両面で攻めるための用具なのに対し、日ペンは片面で勝負する尖った用具です。
なぜ日ペン使用者は減ったのか
かつての日本卓球界では、日ペンを使用する選手が数多く活躍していました。
日ペン使用者が減っていった主な要因は、以下の3つです。
• バック対バックが主流化:片面主体の日ペンは、バックハンドでの連続攻撃に対応しにくい
• 40mmボールへの変更:スピードが低下し、ラリーが続きやすくなった
• 両ハンド連続攻撃の標準化:フォア主体の日ペンは回り込みが間に合わない場面が増えた
現代卓球では両ハンドで連続して攻撃する場面が増え、バックハンドの重要性が以前より高まりました。その結果、バック攻撃を行いやすいシェークハンドや中ペンを選ぶ選手が増えています。
日ペンのメリット:今でも根強い人気がある理由とは
日ペンには、シェークハンドや中ペンにはない明確な強みがあります。
ここでは日ペンの4つのメリットを紹介します。
強烈なフォアドライブ
日ペン最大の魅力は、なんといってもフォアドライブの圧倒的な破壊力です。
特にブレードが縦に長い「角型」は、打球時に強烈な遠心力がかかる設計になっています。これにより、シェークハンドでは真似できないほどの重いドライブを生み出します。
さらに手首の自由度が高く、コルクで握りが安定しているため、回転量も乗せやすい構造です。
単板ラケットとの相性も抜群で、特有の球持ちと弾みを活かせば、さらに球威が増して「一撃必殺」のドライブを放てます。
このフォアドライブの威力こそが、日ペンの魅力の一つです。
前陣速攻・ミート打ちとの相性の良さ
日ペンは特に前陣で真価を発揮します。
ペンホルダーは手首の可動域が広く、打点の早いミート打ちやスマッシュを打ちやすいのが特徴です。
表ソフトラバーとの相性もよく、シェークに比べてラケット面を合わせやすいため、ライジングを弾く攻撃を得意とします。
ドライブ主戦型が主流となった現在でも、相手に時間を与えない前陣速攻スタイルは十分通用します。コンパクトで鋭いスイングから繰り出される連続攻撃は、現代卓球でも強力な武器になるでしょう。
手首の自由度を活かした繊細な台上処理
日ペンは強打だけでなく、サーブや台上技術でも大きな強みがあります。
日ペンはペンを握るように持つため、シェークハンドに比べて手首を使いやすいのが特徴です。
この手首の自由度は、台上での繊細な処理に絶大な威力を発揮します。
特にショートでは、同じ構えからインパクト直前にラケット面を調整し、クロスやストレートへ打ち分けることができます。このようなことができるのは、手首の自由度があってこそです。
さらにサーブでも、手首の使い方ひとつで横回転・横下回転・横上回転と多彩に出し分けられ、レシーバーに迷いを生じさせやすいのも日ペンの強み。シェークに比べ、手首を使った細かな変化をつけやすいのも魅力です。
シェークが「両ハンドのパワー型」だとすれば、日ペンは「手首の繊細さで翻弄する型」と言えるでしょう。
少数派だからこそハマる戦術
現在の卓球界では、シェークハンドが圧倒的多数を占めています。そのため、多くの選手はシェーク同士のラリーや球質には慣れていても、日ペンとの対戦経験はそれほど多くありません。
日ペンに慣れていない相手は、日ペン特有の早い打点での攻撃やコースに戸惑い、本来の力を発揮できないことも少なくありません。
少数派であることは決して不利なことではありません。むしろ相手の経験値の少なさを利用できる点は、日ペンならではの隠れた強みと言えるでしょう。
日ペンのデメリット
日ペンには多くの魅力がある一方、現代卓球では不利になる場面も存在します。デメリットを正直に理解したうえで、自分なりの対策を持っておくことが大切です。
バックハンド処理が難しい
日ペンの最大の弱点は、バックハンドの処理です。
片面打ちを前提としている日ペンは、バック側にボールが来たときの攻撃手段が限られます。シェークハンドであれば裏面のラバーでそのままバックドライブを打てますが、日ペンの場合はショートやプッシュで凌ぐか、フォアに回り込む必要があります。
もちろん、これらの技術を極めれば十分に戦うことも可能です。
しかし現代卓球ではバック対バックのラリーが標準になっており、バックハンドで攻められる場面が増えています。この弱点をどう克服するかが、日ペンで戦い続けるための最大の課題と言えるでしょう。
ラケットや用具の選択肢の少なさ
もうひとつのデメリットは、用具の選択肢の少なさです。
各メーカーのラインナップを見ると、シェークハンドが圧倒的に多く、日ペンのモデルは年々減少傾向にあります。
ラバーの組合せについても、シェークハンドを前提とした情報が多く、日ペンに最適な組合せを探しにくいのが現状です。
特に檜単板のラケットは価格も高く、選択肢が限られます。ただし、バタフライ・ニッタク・VICTASなど主要メーカーは依然として日ペンラケットを製造・販売しており、「選べない」わけではありません。
日ペンに裏面ラバーは必要か
バックハンドの弱点を補う方法のひとつが、裏面にラバーを貼る「裏面打法」です。しかし、すべての日ペンユーザーに必要とは限りません。
裏面にラバーを貼るメリット
バックハンドの弱点を補うために、近年では裏面にラバーを貼る選手が増えています。
ショートやプッシュを中心に対応していた場面で、裏面打法によりバックハンドドライブやチキータなど、回転を掛けて積極的に攻撃できるようになるからです。
バック対バックのラリーになっても力負けせず、ラリーの主導権を奪い返すことも可能です。
相手に「バックに送っても攻撃される」と意識させることができ、フォアへの回り込みにも余裕が生まれます。
守備一辺倒になりがちだった日ペンの戦術をガラリと変え、両ハンド攻撃という新たな戦術を得られるのが最大のメリットです。
片面のまま戦う選択肢もあり
裏面打法は確かに魅力的な技術です。だからといって、すべての日ペン選手が習得すべきというわけではありません。
実際に現在でも、片面のまま戦い続けている日ペンの選手や愛好家は数多く存在します。
裏面にラバーを貼ると、ラケット全体の重量が増し、日ペン本来のメリットである「軽さ」と「操作性」が失われてしまいます。
また、裏面打法は習得に時間がかかります。日ペン最大の武器はフォアハンドの威力であり、人によっては裏面打法を覚えるよりも、フォア攻撃や台上技術を磨いた方が強くなれることも少なくありません。
裏面打法は選択肢の一つです。自分のスタイルに合わないと感じるのであれば、無理に取り入れる必要はありません。
現代卓球でも日ペンは通用するのか
「日ペンは時代遅れ」と言われがちですが、現代卓球の第一線で活躍する日ペン選手が今も存在していることを見れば、日ペンが決して「弱いラケット」ではないことが分かります。
今でも活躍する日ペン選手たち
日ペンの実力を証明している筆頭が、松下大星選手です。日本式ペンホルダーの両面にラバーを貼る、世界でも稀有なスタイルです。日本リーグやTリーグの第一線で活躍しており「ペンドラの星」と称されています。
松下選手は現代卓球に合わせて進化したスタイル。日ペンの良さに加え、裏面打法によるシェークのような両ハンド攻撃を得意としています。
また、全日本卓球選手権大会などを見れば、強烈なフォアドライブを武器に戦う日ペン選手の姿を今でも見ることができます。
使用者こそ減ったものの、日ペンならではの攻撃力や戦術は決して失われていません。
日ペンは「弱い」のではなく尖った用具
日ペン使用者が減った理由は、日ペンが弱くなったからではありません。
バックハンドの重要性が高まった現代卓球において、シェークハンドや中ペンの方が有利な場面が増えた結果、主流の座を譲ったに過ぎないのです。
一方で、日ペンには他のラケットにはない魅力があります。
強烈なフォアドライブ、手首の自由度を活かした台上技術。そして、少数派だからこそ相手の意表を突ける戦術性も大きな武器です。
もちろん、バックハンド処理や用具の選択肢の少なさといった弱点もあります。
日ペンは万人向けのラケットではありません。しかし、その個性に魅力を感じる人にとっては、他のラケットでは代えの利かない唯一無二の存在と言えるでしょう。
日ペンはこんな人におすすめ
では、日ペンはどんな人に向くのでしょうか。日ペンスタイルが光るプレーヤータイプを紹介します。
前陣主体で攻めたい人
日ペンは、前陣で主導権を握りながら攻撃したい人におすすめです。
フォアハンド主体でプレーしやすく、打点の早いミート打ちやスマッシュ、鋭いフォアドライブを武器にできます。
また、手首の自由度を活かしたショートやプッシュといった台上技術とも相性が良く、インパクトの直前で面を合わせて意表を突くコースを狙い、相手を振り回せます。
特に「バックハンドで打ち合うよりも、フォアハンドで勝負したい」という人にとって、日ペンは非常に魅力的な選択肢です。
回り込みやフットワークが苦にならず、早い打点で相手にプレッシャーを掛け続けたい人は、日ペンの性能を最大限に活かせるでしょう。
少数派でも自分のスタイルを貫きたい人
現在の卓球界は、シェークハンドが主流になっているため「シェークハンドに変えたほうが良い」と言われることがあるかもしれません。
日ペンには日ペンならではの魅力があり、その独特なプレースタイルに惹かれて使い続ける選手や愛好家も数多く存在します。
• 強烈なフォアドライブ
• 繊細なタッチで相手を振り回せるショートやプッシュ
• 回転量豊富なサーブ
このように、日ペンには少数派だからこそ得られる個性や戦術的優位性があります。
「日ペンが好きだから使う」
それだけで日ペンを選ぶ価値は十分にあります。慣れ親しんだ感覚は、無理にシェークに転向するより実戦的です。
おすすめ日ペン3選
最後に、現行モデルの中からおすすめの日ペンラケットを3本、プレースタイル別に紹介します。
ドライブ主戦型|VICTAS ダイナム 10.5
日本式ペンホルダーの王道ともいえるラケット。
高級木曽檜を10.5mmという贅沢な厚さで用いた最高峰の日本式ペンラケットです。
単板特有の打球感と高い反発力を兼ね備え、球持ちの良さと弾みのバランスが秀逸。
一撃必殺の強烈なフォアドライブを放ちたいドライブ主戦型におすすめできる1本です。
ペン表速攻型|Butterfly ハッドロウ JPV-R
広範囲で威力を発揮する5枚合板の角丸型日本式ペンホルダーラケット。
丸みを帯びたラケット形状は、ラケットの重心がグリップ寄りになっているため、前陣での繊細な角度調整やコンパクトなスイングが非常にやりやすくなっているのが特徴。
扱いやすく、初級者からベテランの速攻型まで幅広く愛される1本です。
異質攻守型(反転式)|Nittaku ストリーク R-H
ラケットをくるくると反転させながら、異なるラバーを貼った表面と裏面を巧みに切り替えて戦う異質攻守型のために作られた反転式ラケット(いわゆるローター)。
反転操作をしやすい「反転式グリップ」を採用しており、指の引っかかりを保ちつつ、滑らかにラケットを反転させやすい構造になっています。
もともと両面にラバーを貼る設計になっているため、ラケットを反転させて戦うスタイルはもちろん、裏面打法を取り入れた現代的なペン粒スタイルにも対応できる1本です。
まとめ:日ペンは現代卓球でも強し!
「日ペンは時代遅れ」と言われることもありますが、それは卓球のトレンドが変わっただけで、決して弱くなったわけではありません。
バックハンドの重要性が高まった現代卓球では、シェークハンドや中ペンのほうが有利な場面が増えました。
しかし日ペンには、以下のようなシェークにはない魅力があります。
• 強烈なフォアドライブ
• 手首の自由度を活かした台上技術
• 少数派だからこその戦術的優位性
バックの弱点が気になるなら裏面打法を取り入れる道もあり、あえて片面を貫いて尖った個性で勝負するのも立派な選択です。
確かに日ペンは、誰にでも勧められるラケットではないかもしれません。それでも、その独特な打球感や戦い方に惹かれた人にとっては、ほかでは味わえない魅力が詰まった相棒になります。
自分に合ったスタイルを磨き、日ペンならではの卓球を楽しんでください。
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